柳家花緑

「中学生時代の成績表 ほとんどが1」

 

22歳という若さで真打(しんうち)となった柳家花緑(やなぎやかろく)さん。

当時は“戦後最年少真打(しんうち)”としてもその名を一躍有名にします。

 

柳家花緑さんの滑舌良い落語は聴いていてとっても心地良いものです。

以前、ニュース番組に出演されていましたが、その時の話しっぷりに、「一体誰だ?」なんて思ったものです。噺家だと知ったのは少し後でした。

 

そんな、実力派の柳家花緑さんが2017年に入り自身の発達障害について告白しました。

柳家花緑は発達障害のなかでも学習障害があります。

学習障害があるなかで一体どのようにして戦後最年少真打にまで昇進したのでしょうか?

 

公表した中学生時代の通信簿(成績表)が物語るものは一体何なのでしょうか。

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柳家花緑の小学生時代や中学生時代

 

現在も誤字脱字が絶えないという柳家花緑さん。

台本にも漢字の全てにルビを打って読んでいるのです。漢字を覚えることが難しいのです。

小学生時代の柳家花緑

文字を覚えるのが困難な学習障害でした。小学生当時は自分自身が学習障害とは知りませんでした。

一度話しはじめると、いつまでも話し続けてしまう多弁の症状がありました。大人になった今でもよくあるそうです。

多弁症については、次の様に 冗談を言って笑い飛ばしています。

「たべん(多便と掛けて)症と言ってもいっぱい出ちゃった訳ではない

何でも笑いに変えるところが流石は噺家さんですね。

勉強が全くできない

「読み書きが全くできなかった」と柳家花緑さん本人が言われています。

これは小学生から中学生になっても変わらず続いていきます。

中学校の成績表がそれを物語っています。

 

小学校時代の担任の評価

小学校時代の学校の先生の評価は次の通りでした。

「気が散って学習が身に入りません」

「調子にのるととどまるところをしりません」

 

授業中もじっとせずに喋ってばかりでした。

まさに噺家さんとしては抜群のスキルなのかもしれませんが、人知れず苦労もしていました。

喋ってばかりいたので、先生に往復ビンタされたこともあったと語っています。

 

変わり者と見られて周囲の人達を戸惑わせてばかりいるのが普通の状態でした。

10才の時にピアノ習いはじめるのですが、耳は良かったのが幸いでした。

柳家花緑の中学時代の成績表

中学時代の成績表(通知表)についての話をした所、視聴者から、メールが来ました。

“自分の息子が学習障害で、その症状と柳家花緑さんの状況が似ているから発達障害なのでは”との趣旨のメールにはじめて発達障害を意識します。

その後、自分が発達障害であることがわかります。

柳家花緑の中学生時代の成績表(通知表)

中学生時代の成績表(通知表)の内容です。

全て5段階評価です。

  • 国語 2
  • 社会 1
  • 数学 1
  • 理科 1
  • 音楽 5
  • 美術 5
  • 保健体育 3
  • 家庭科 2

数学・社会・理科 : オール1

音楽・美術 : オール5

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大人になって判明した発達障害

発達障害とは脳機能の発達が関係する先天的な障害の総称のことです。

成長の過程で判明することが多く、注意欠陥・多動性障害、自閉症障害、アスペルガー症候群、学習障害などがあります。

近年ではスペクトラムとして見るので、どれか1つに特定するよりは幾つかが少しずつ重なって症状が出ていることが多いのです。

社会生活で困ることから分かることが多いのですが、柳家花緑さんの場合は適職であったこともあり、また、自分自身で苦手部分と上手に付き合ってきたことから気付かなかったのでしょう。

また、少し以前まではキャラクターなどで済ませてくれていた空気感がありました。最近の日本では浮いてしまいやすく、許されない風潮もありますからね。気付かざるを得ない状況も多いように感じます。

柳家花緑さんのケースで見ますと、知的発達に遅れはありません。学習障害の中でも識字障害(ディスレクシア)といえます。柳家花緑さんは読み書きに困難があるためです。

年齢など教育の段階に見合わない状況からも判断します。

柳家花緑の姿からは判断できない

大人の発達障害の特徴として、大人になるまで分からなかったことが挙げられます。

良くも悪くも大人になるまで周囲との能力の偏りを自分自身で克服してきていたのです。

2013年に視聴者のメールから自分が発達障害であると知ることとなります。

柳家花緑自身が発達障害を告白

そして、2017年5月に自著「花緑の幸せ入門 『笑う門には福来たる』のか?」(竹書房)にて告白に至ります。

学習障害がある中で、いかにして職人芸の話術で成功を収めてきたのでしょうか。

 

独自のやり方で能力の偏りの克服


能力の偏りがあると日常生活や社会生活が大変です。

大人になるまでは周囲の家族が知らない間に助けてくれていたことも、大人になると目立ち始めます。

発達障害者への無認識からの誤解

大人の発達障害の特徴ですが、一見すると仕事が人よりできる面があったり、普通に映る面があるために誤解されてしまいやすいのです。

どの様な誤解かと言いますと、例えば、処理能力は高いのに人の話を聞いていないとか、アイデアは良いのにミスばかりして不注意を連発するなどがあるとします。

すると周囲は、その人が苦手にしているからできないのではなくて、怠慢だとかいい加減だとかに映ってしまうのです。(ギャップがいい!で許してよ)

「雑に仕事をしやがって」

「いい加減なやつだ」

「やる気の無いやつだ」

「真剣ではない」

「人の話を受け入れない」

など、様々な誤解が生まれるのです。

柳家花緑の工夫

台本を読むのは一苦労です。

漢字は全てにルビを打ちます。これだけの作業でも人の数倍の時間が掛かるでしょう。

初めてきちんと本を読んだのは、18歳の時でした。基本的には落語は本ではなく、師匠からの口伝やテープで覚えたようです。

なんと今では持ちネタの数は190ほどになります。

すでにルビ付きで用意されているとしても、これまでの過程でのストレスはいかほどだったのでしょうか。自身が噺家として生きるために生み出された智慧が詰め込まれています。

柳家花緑が落語を覚える時

まず、ルビ付きの本を何度も呼んでキャラクターが安定してきたら録音します。

そして、録音した自分の声を何度も聴き、頭に叩き込むのです。

柳家花緑のサイン会風景

サイン会ではサインを求めてくる方の名前が分かりません。

漢字を言われても書けないのです。ですので、まず、ファンに名前を書いてもらい、それを見せてもらいながら書くのです。

誰にでもできそうなことで困難はあるのです。

柳家花緑は自身の学習障害をどう感じているか


本を出した理由は何なのでしょうか。

柳家花緑さんは人間国宝でもある5代目柳家小さんの孫です。

偉大な祖父がいるために、20代からのプレッシャーも相当なものがあった様です。

  • 偽物感を自分で感じる。
  • 自分が実在している実在感がない。
  • 祖父がいなければ自分には価値がない。

常にこうした自己肯定感のない思いとは隣り合わせだった様です。

 

「柳家花緑としての自分を知ってほしい」

 

他の人よりも自分を一個の人間として知ってほしい。自然の思いかもしれません。

弱みをさらけ出すことで正直に今の自分を伝えることにつながる

正直に自分のことを言いたい。それが人に喜ばれるのではないかとの欲求もありました。

そして、46歳の時に告白をするのです。

弱みをさらけ出すことで救われた

病気のレッテルをもらったことは柳家花緑にとっては救いであり吉報でした。

 

「全部を自分で背負わなくてもいい」

「良かった。寄りかかっていいんだ:生きるのが楽になる」

 

これまでの人生は大変でした。

 

一定の科目が良ければ

「やればできるんだから、できない科目もやってみよう(やればできる)」

と言われるのは人情でしょう。励ましでもあるのでしょう。

しかし、本人にはできない理由が分かりません。

 

すると、

「やればできるはずなのにできない。サボっている自分が悪いのだ。」

「自分はできないやつだ」

 

となってしまうのです。

 

「やればできたかもしれない?本当にやらなかったのか?

「自分は人よりも劣っているんだ・・」

苦手意識や劣等感は拍車を掛け、自信を喪失していきます。

 

自分が発達障害だと分かるまでは、こんな風に思って生きていたと語っています。

 

本での自身の発達障害の告白は“自分自身が自分らしく生きるために必要なこと”だったのですね。

 

もちろん、発達障害には重度軽度もあります。

幅もありますし種類もたくさんあります。全てが柳家花緑さんのケースが当てはまるわけではありません。

多くの人にもっと知ってもらい正しい理解の輪を拡大していきたいですね。

まとめ

 

“おしゃべりのおかげで今の自分がある。この障害だったことを感謝しています。”

柳家花緑さんの言葉ですが、今の自分があるのは発達障害があったお陰だなんて言えるっていいですよね。

苦手を補うと同時に得意を活かし合える成熟した社会は、もっと沢山の才能を生み出してくれるでしょう。

落語家の生き様とか噺家の血とか色々考えされられました。

苦手の克服を自分でできたのはなぜでしょうか。

 

周囲の協力が常にあったのだと感じます。

 

益々のご活躍を楽しみにしたいですね。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

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